「期待に応えることが、美容師としての信頼につながる。」
中央通り店6年目の山下瑞生です。よろしくお願いします。
PEEK-A-BOOという美容室でアートディレクターをしています、栗原貴史です。(笑)
よろしくお願いします。
今日は栗原さんにお願いした理由があるんです。
専門学校の時に、栗原さんがステージでカットをされていて、そのモデルをやらせて頂きました。
その時の姿や雰囲気がすごく印象に残っていて。
私は当時、くせ毛がすごくて、本当はいろんな髪型に挑戦したかったんですけど、「難しいね」って言われることも多くて、なかなか挑戦できなかったんです。
でも栗原さんにカットしていただいて、「こんな髪型になれるんだ」って初めて思えました。
あれが美容師になりたいと思うきっかけの一つだったなって、今振り返っても思います。

ありがとう。
あの時は縮毛矯正が伸び始めていて、結構難しい髪だったよね(笑)
本当に難しかったと思います(笑)
前下がりのツーセクションっぽいスタイルだったかな。
そうです。
すごく嬉しかったのを覚えています。
美容ってすごいなって思えた瞬間でした。
「期待に応えること」
今日は色々お話を伺いたいんですが、栗原さんが仕事をする上で、一番大切にしていることは何ですか?
やっぱり「期待に応えること」かな。
家族でも友達でも、お客様でも、みんな少なからず何かを期待してくれていると思うんだよね。
利害関係がまったくない人って、実はすごく少ない。
「この人は自分にとってプラスになりそうだな」とか、「一緒にいたいな」と思うから人は関わるわけで。
それって、つまり期待してくれているってことなんだよ。
だから、その期待に応えていくことが、人との関係を築く一番の近道なんじゃないかなと思う。
なるほどですね!!
もちろん美容師だから、ヘアスタイルで期待に応えることもできる。
でも、それだけじゃないと思うんだよね。
例えば、「雑誌の表紙を担当しました」とか、「コンテストで結果を出しました」
とか。
そういうことを知ったお客様が、「この人を選んでよかった。」「この人、業界でも頑張っているんだ。」
そう思ってくれたら、それも期待に応えられていることになると思う。
確かに、お客様ってそういう姿も見ていますよね。
そう。
「私、この人を選んで間違ってなかった。」
そう思ってもらえることが一番嬉しい。
それが美容師としての恩返しでもあると思ってる。

「組織で大切にしていること」
栗原さんの周りには、前向きでやる気のある方がすごく多い印象があります。
そういう環境をつくるために、普段から意識していることってありますか?
すごくシンプルだけど、
・挨拶をすること。
・感謝を伝えること。
・人の悪口を言わないこと。
この三つかな。
三つ目は本当によく聞きます。
結構口酸っぱく言ってる。もちろん冗談でいじったりすることはあるよ(笑)。
でも陰で悪口を言っても、いいことなんて一つもない。本人に言えることなら本人に言えばいいし。立場上、言えないことももちろんあるとは思う。
でも、みんなが同じ場所で働くなら、最低限そこはなくしたい。
確かに…。
陰口って、一部だけ切り取られて伝わることが多いんだよ。
最初から最後まで聞けば意味が分かる話でも、途中だけ聞いた人は誤解する。
そこから尾ひれがついて、変な噂になる。
だから、そういうことはできるだけなくしたいと思ってる。
挨拶も大事ですよね。
うん。
朝来た時。
帰る時。
最低限そこだけはちゃんとした方がいい。それだけでコミュニケーションが始まるからね。

「自分で考えられる人になってほしい」
栗原さんは、スタッフに対して「これはしてほしくない」とか、「こうしてほしい」と伝えることってあるんですか?
基本的には、さっき話した
・挨拶をすること
・感謝を伝えること
・人の悪口を言わないこと
その三つくらいかな。
それ以外は、そんなに「こうしなさい」って言うことはないかもしれない。
意外です。
僕の師匠でもある山内さんも、あまり細かく言うタイプじゃなかったんだよね。
もちろん「それは違う」っていう時は言うけど。
でも、良いか悪いかって、自分で考えないと結局ずっと言われ続ける人生になっちゃう。
もちろん、その方が楽な人もいると思う。
でも美容師って、最後は自分がお客様と向き合う仕事だから。
自分で判断できる力がないとダメなんだよね。
だから方向が違っていたら修正するのはこっちの仕事だけど、まずは自分で考えてほしい。
栗原さん自身は、普段から意識していることってありますか?
特別何かあるというよりは、自分がやっている姿を見せることかな。
その姿を見て、周りが「頑張ろう」って思ってくれたら嬉しい。
だから、なるべくコミュニケーションは取るようにしてる。
でも、それくらいかな。
私も意識してみます。
いや、もうできてると思うよ(笑)。
「悪口って、途中だけ伝わるから怖い」
さっきのお話で、人の悪口を言わないっていうのがすごく印象に残りました。
悪口って言うと少し強い言い方だけどね。
もちろん、物事っていろんな見方があるじゃん。
Aさんが正しいと思っていても、Bさんから見たら違うこともある。
だから、その内容自体が全部間違っているとは思わない。
でも、相手が聞いて嫌な気持ちになる話だったり、陰で話すことだったりするなら、それは本人に伝えた方がいい。
その方が絶対に健全だから。
確かに。
あとから自分もモヤモヤしますもんね。
そう。
結局、自分も気持ち悪いしね。
「美容人生は、今が第三章」
栗原さんのターニングポイントって、たくさんあると思うんですけど。
美容師としてのターニングポイントも聞いてみたいです。
今、美容人生でいうと24年目くらいなんだけど。
自分の中では今が”第三章”なんだよね。
第一章は入社してから新宿に行く前くらいまで。
第二章が新宿時代。
そして今が第三章。
そんな感覚。

フェーズが変わった感じですか?
そう。
場所も変わったし、立場も変わった。
考え方も全然変わったなって思う。
一番最初のターニングポイントは、東京に出てきてPEEK-A-BOOに入社できたこと。
それが一つ目。
「自分は器用じゃなかった」
そのあとアシスタント時代に、大きな出来事があって。
テストでビリを取ったんだよね。
その時に初めて、「あ、自分ってやらないと上手くならない人なんだ。」
って気付いた。
自分のタイプを知ったんですね。
そう。
基礎って、やればやるほど一直線に伸びる人もいれば、ずっと停滞して、ある日突然伸びる人もいる。また停滞して、また急に伸びる人もいる。
自分は完全に後者だった。だから、自分の成長の仕方を知れたことが、一番大きかった。
「器用だと思っていた」
入社した頃は、自分は器用な方だと思ってたんだよ。
でも全然違った(笑)上には本当に器用な人がたくさんいた。
その時初めて、「あ、俺は努力しないとダメなんだ。」って分かって、その日から練習したよ。
逆に、その経験があって良かったですね。
本当に良かった。
追い込まれたから今がある。
私も、追い込まれてみたいです(笑)。
(笑)。
でも、自分で追い込むのって難しいんだよ。
人って楽な方を選びたくなるから。
だから環境に追い込まれることも大事だし、自分で追い込める人はもっと強い。
「人を動かすことの難しさを知った」
その後は、原宿店に異動されるんですよね。
そう。
ANNEXから原宿店に移って、そのあと新宿店ができるタイミングでまた立場が大きく変わった。
その時かな。人を動かすことの難しさを初めて知った。正直、自分では「できるだろう」って思ってたんだけど、全然そんなことなかった。チームを引っ張ることって、本当に難しいんだよね。それと同時に、自分がPEEK-A-BOOの中でどうなりたいかというより、美容業界の中でどういう立場になりたいかを考えるようになった。
「コロナで全部変わった」
新宿時代を経て、こちらに異動してきて。
いろんなことの結果が少しずつ出始めた頃に、コロナが来た。
あれは本当に大きくて、人の考え方も働き方も全部変わった。
あの頃は本当に大変でしたよね。
コロナ前って35〜36歳くらいだったかな。
やらなきゃいけないことも山ほどあって、責任も重くて。
忙しすぎて「もう、お腹いっぱいかも…」って思う瞬間もあった。
だから40歳くらいになったら少し働き方を変えて、ちゃんと休みも取らないと、この先長く美容師を続けられないかもしれないって思ってた。
でも、その直後にコロナですよね。
そう。
一気に真逆になった。
新宿店は2か月営業できなかったから。
何もできない時間が2か月あって。
その時に思った。「このままじゃダメだ。」
って。あの時間があったから、今の考え方になった部分は大きいと思う。

「器用じゃないから努力した」
アシスタント時代のお話ともつながりますね。
そうなんだよ。
結局、自分は器用じゃなかった。
でも、それが分かったから努力できた。
逆に言えば、そのタイミングがあって良かった。
私は「追い込まれてみたいです」って思いました(笑)。
(笑)。
でも追い込まれるって大事なんだよ。
もちろん自分で追い込めたら一番いい。
でも人って、ギリギリになる前に楽な方へ逃げちゃうことも多いから。
環境に追い込まれることも必要なんだよね。
「どこのリングでも勝てる人になれ」
栗原さんが大切にしている言葉ってありますか?
ある。
これは山内さんから教わった言葉なんだけど。
「自分でリングを作って、そのリングの中だけで戦える人になるな。」って。
どういう意味ですか?
例えば、
新宿だからできる。原宿だからできる。PEEK-A-BOOだからできる。そういう人じゃなくて。
新宿でも。原宿でも。銀座でも。地方でも。海外でも。どこへ行っても戦える人になれってこと。
なるほど。
美容業界のトップにいる人って、みんなそうなんだよ。
場所が変わっても結果を出せる。環境を言い訳にしない。だから、自分もそういう人になりたいと思ってる。
「サロンの中だけで評価されても意味がない」
今は特化型の美容師も増えてるから、自分のリングを決める人も多い。
それも一つの考え方だと思う。でも、自分は違う。クリエイションも、サロンワークも、教育も、外部活動も、全部できる美容師でいたい。
美容業界全体で評価されるということですね。
そう。
サロンの中だけで評価されて満足しちゃうと、世の中に出た瞬間に「誰ですか?」ってなることもある。それは悲しいじゃん。だから美容業界、日本、そして世界。そのくらい大きい視点で考えていたい。
「だから発信する」
そのためには、コンテストもSNSもセミナーも、全部必要なんだよ。発信しないと誰も知らないから。
確かに、そうですね!
例えば昔、他店の先輩のアシスタントについていた時に、「あの子頑張ってるよね。」
って言ってくれる美容師さんがいた。その後、自分が結果を出した時に、「やっぱりあの子だった。」って思ってもらえて、そうやって少しずつファンが増えていく。
だから、外に向けて発信することって、本当に大事なんだよ。

「AIの時代だからこそ、人にしかできないことがある」
最後に、これからの目標や、これから流行ると思っていることを教えてください。
今はデジタルとかAIって言われる時代だけど、結局最後は、人と人とのつながりが大事なんじゃないかなって思う。
だから、自分にしかできないこと、人じゃないとできないこと。
そこを追求していく人のところに、人は集まるんじゃないかな。
何が流行るかっていうよりも、そういう人が選ばれる時代になると思う。
なるほど。
もちろんAIはなくならなし、これからもっと進化すると思う!
だから、AIを使わないっていう話じゃなくて、うまく使いながら、自分にしかできないことの濃度を高めていくことが大事なんだよね。
技術もそうだし、人との会話や考え方もそうだと思う。
全部含めて、人だからできる価値を高めていく。それがこれからの美容師には必要だと思う。
「AIにも、人にも選ばれる人になる」
これからは、AIがお客様に美容師を提案する時代にもなっていくと思う。
昔だったら、インターネットの検索で一番上に出てくる人が選ばれていたかもしれない。
でも今は違って、AIが「この人がいいですよ」って選ぶ時代になってきている。
だから、AIにも選ばれなきゃいけないよね!
でも、それだけじゃなくて、人にも選ばれなきゃいけない。
この二つを両方やっていく必要があると思う。
両方ですね。
そう。
例えば紹介もそうだし、自分が直接会ってファンを増やすこともそう。
それは人と人とのつながり。
一方で、自分の情報をちゃんと発信して、AIや検索にも見つけてもらえるようにしていく。
その両軸がこれからは大事なんだよね。
「発信を続けていてよかった」
だから、Look mag.みたいな取り組みもすごく大事。
早く始めていて良かったなって思う。
自分という人間を知ってもらえる場所があるって、本当に大きい。
確かに、“人”にフォーカスした媒体があるのはすごく価値がありますよね。
「これからは自分の未来をつくってほしい」
山下さんとは学生の頃に出会って、うちに入社してくれて、スタイリストになって。
ここから先は、自分の未来をつくるのは自分しかいない。だから頑張ってほしい。
ありがとうございます。
私は学生の頃に栗原さんと出会って。
Look maという存在を知った時も、「もし対談をお願いするなら栗原さんしかいない」と思っていました。
今回こうして実現できて、本当に嬉しかったです。
「初心を忘れずに」
周りには本当にすごい先輩もいるし、後輩でもすごい人がたくさんいます。
だから、自信をなくしそうになることもあります。
でも、PEEK-A-BOOに入りたいと思った頃の気持ちや、美容師を目指した時の気持ちは、今でも思い出すことがあります。
その初心を忘れずに、これからも頑張っていきたいと思います。
うん。
応援しています。
頑張って。







