あらすじ
1991年の香港。マフィアに育てられたラウは、その優秀さを買われて警察学校に送り込まれ、警察内部へと潜入する。 一方、警察官のヤンは組織の命によりマフィアへの潜入捜査官となり、表向きは退学させられる。
それから10年。 それぞれ相手組織に深く潜り込んだ2人は、やがて互いの存在に気づき始める。 裏切りと忠誠の狭間で揺れながら、自らの“正義”を信じて生き抜くふたりの壮絶な攻防が幕を開ける。
印象に残ったシーンと感じたこと
今回この映画を語り合ったのは、世代も感性も異なるふたりの美容師。だからこそ、感じ方の違いがとても面白かったです。
「初めはそんなに期待してなかったけど、構成が良くて面白かった!」という意見があったり、「一人ひとりの人間性をもっと深掘りしてほしかった」という声もありました。
また、続編の存在(2が過去、3が未来)を知って「あのモヤモヤ感は意図されたものなんだ」と気づいたり、「結局、主人公って誰なんだ?」という会話が生まれたり——。
視点が違えば“好きなキャラ”も違っていて、「私は善人でありたかったラウが好き」「ヤンの切なげな表情がたまらない」と好みが分かれるのもまた楽しいポイントでした。
「どちらが主人公なのか?」と観終わったあとに考えてしまうほど、ダブル主役の構成が見事。 ヤンの哀愁ある表情や、ラウの“善人であろうとする葛藤”に強く惹かれました。
特に好きなのは、ラストの対峙シーン。 追う者と追われる者、でもどちらも正義のために生きてきた。そんな複雑な感情が交差する空気感に震えました。
美容師として気になった部分
映画の中で何度も登場する“皮ジャン”や“白タンクトップ”といった男らしいファッションが強く印象に残りました。 個人的にもよく着るので、つい目がいってしまいます(笑)
ファッションだけでなく、男性キャラクターたちの無造作なヘアスタイルや表情の作り方にも注目。 無言の中に宿る緊張感や人間性の演出は、サロンワークでも応用できそうなヒントが詰まっていました。
映画を観ながら交わしたもうひとつの会話
この映画の登場人物たちは皆、どこか不器用で、葛藤を抱えています。 中でも心に残ったのは、カウンセラーの女医との関係や、皮ジャン、白タンクといった“男らしさ”の象徴のようなスタイリング。 「俺もよく着るから目に入っちゃったよ(笑)」という共感もあったりして、ただのフィクションじゃない、現実に繋がるリアリティを強く感じました。
あとがき
スパイ映画というジャンルでありながら、“人間の弱さ”や“信じることの苦しさ”をこんなにもリアルに描いた作品はなかなかありません。
どちらの生き方も正しくて、どちらにも救いがない。 だからこそ心に残る。
『インファナル・アフェア』は、観る人の価値観を揺さぶる、重厚で美しい映画です。 未見の方はぜひ、静かな夜にじっくりと向き合ってみてください。