April
10
Thursday
17°C Clouds
Tokyo

share

Home > 趣味は別腹 > 『インファナル・アフェア』|揺らぐ正義、交錯する運命——2人の男が選んだ道

『インファナル・アフェア』|揺らぐ正義、交錯する運命——2人の男が選んだ道

更新日:2020.06.23

記事の前編はこちら

『フランシス・ハ』|夢と現実の狭間で揺れる、すべての人へ

フランシス・ハ原題: Frances Ha(2012)86分監督: ノア・バームバック主演: グレタ・ガーウィグ 誰かと自分を比べて落ち込んだり、将来に不安を抱えたり——。 自分の「好き」を追いかけたいけど、現実はそう甘 […]

インファナル・アフェア
画像:作品の公式サイトより引用

インファナル・アフェア
原題: Infernal Affairs/無間道(2002)101分
監督: アンドリュー・ラウ、アラン・マック
主演: アンディ・ラウ、トニー・レオン

正義とはなにか、信じるもののためにどこまで耐えられるのか——。 『インファナル・アフェア』は、正反対の立場に置かれた2人の男の運命が交差する、極限の心理戦が描かれた傑作です。

サスペンスとしての完成度はもちろんのこと、人間の内面を深くえぐるドラマとしても観応え十分。 今回はこの作品を観て感じたことを、印象的だった対話や美容師視点の観察も交えながらお届けします。

あらすじ

1991年の香港。マフィアに育てられたラウは、その優秀さを買われて警察学校に送り込まれ、警察内部へと潜入する。 一方、警察官のヤンは組織の命によりマフィアへの潜入捜査官となり、表向きは退学させられる。

それから10年。 それぞれ相手組織に深く潜り込んだ2人は、やがて互いの存在に気づき始める。 裏切りと忠誠の狭間で揺れながら、自らの“正義”を信じて生き抜くふたりの壮絶な攻防が幕を開ける。

印象に残ったシーンと感じたこと

今回この映画を語り合ったのは、世代も感性も異なるふたりの美容師。だからこそ、感じ方の違いがとても面白かったです。

「初めはそんなに期待してなかったけど、構成が良くて面白かった!」という意見があったり、「一人ひとりの人間性をもっと深掘りしてほしかった」という声もありました。

また、続編の存在(2が過去、3が未来)を知って「あのモヤモヤ感は意図されたものなんだ」と気づいたり、「結局、主人公って誰なんだ?」という会話が生まれたり——。

視点が違えば“好きなキャラ”も違っていて、「私は善人でありたかったラウが好き」「ヤンの切なげな表情がたまらない」と好みが分かれるのもまた楽しいポイントでした。

「どちらが主人公なのか?」と観終わったあとに考えてしまうほど、ダブル主役の構成が見事。 ヤンの哀愁ある表情や、ラウの“善人であろうとする葛藤”に強く惹かれました。

特に好きなのは、ラストの対峙シーン。 追う者と追われる者、でもどちらも正義のために生きてきた。そんな複雑な感情が交差する空気感に震えました。

美容師として気になった部分

映画の中で何度も登場する“皮ジャン”や“白タンクトップ”といった男らしいファッションが強く印象に残りました。 個人的にもよく着るので、つい目がいってしまいます(笑)

ファッションだけでなく、男性キャラクターたちの無造作なヘアスタイルや表情の作り方にも注目。 無言の中に宿る緊張感や人間性の演出は、サロンワークでも応用できそうなヒントが詰まっていました。

映画を観ながら交わしたもうひとつの会話

この映画の登場人物たちは皆、どこか不器用で、葛藤を抱えています。 中でも心に残ったのは、カウンセラーの女医との関係や、皮ジャン、白タンクといった“男らしさ”の象徴のようなスタイリング。 「俺もよく着るから目に入っちゃったよ(笑)」という共感もあったりして、ただのフィクションじゃない、現実に繋がるリアリティを強く感じました。

あとがき

スパイ映画というジャンルでありながら、“人間の弱さ”や“信じることの苦しさ”をこんなにもリアルに描いた作品はなかなかありません。

どちらの生き方も正しくて、どちらにも救いがない。 だからこそ心に残る。

『インファナル・アフェア』は、観る人の価値観を揺さぶる、重厚で美しい映画です。 未見の方はぜひ、静かな夜にじっくりと向き合ってみてください。

Weekly Ranking

Editorial department

PEEK-A-BOO ONE
美容師によるライフスタイルwebマガジン