PEEK-A-BOO AVEDA 恵比寿店の若手スタイリスト・佐藤 優太が、ONE店の店長・佐藤 学に直撃インタビュー。
20代半ばを迎えた今、「接客」「デザインの引き出し」「スタイリストとしての自分らしさ」について学び直したいと願った優太が、ONE店で感じた“洒落ベーシック”のスタイルと“楽しそうな接客”に惹かれ、今回の公開対談が実現した。

1|佐藤が学さんを選んだ3つの理由
ONE店佐藤です。
恵比寿店 佐藤です。今日はよろしくお願いします。
お願いします。
まず学ぶさんを選んだ理由が3つあります。1つ目は、ONE店で学さんの接客がとても印象的だったこと。お客さんと楽しそうに会話している雰囲気に惹かれました。
ありがとう。
2つ目は、学さんが作るスタイルがすごく好きです。ベーシックだけどどこか遊び心があって、洒落てる感じが刺さります。
洒落たいよね。(笑)
3つ目は、今ようやく20代が始まったばかりで、人生の指針がほしいと思ったからです。学さんは20代の頃どう過ごしていたのか、聞いてみたいです。
今いくつだっけ?
25歳です。正直40代のことまでは考えてなくて、1ヶ月先くらいまでしか想像してません。
今を生きるって大事だよ。(笑)
学さんの20代の頃の話、ぜひ聞かせてください。

2|接客の空気感と“お任せ”への距離感
僕は今、新規のお客様にも入るようになって、最初の距離感が難しいなと感じています。どうやって最初に空気を作っているんですか?
お客様が来た時はまず服装を見て、その人の雰囲気を掴みます。
PEEK-A-BOOに来る人はファッションか髪型に興味があることが多いから、コンサバなのかモード系かストリート系か、服を見て想像するね。
一番気を付けているのは、その人が何を気にしているかを聞き出すことだよね。
ライフスタイルですか?それとも髪型についてですか?
まず髪型ですね。
来店する方は「何か変えたい」と思っている場合が多い。
何をしたいかより、何が嫌なのかを聞き出して、そこを直しながら自分らしさをプラスしていっている感じ。
それは初回でですか?
初回からだね。難しくはないと思うけど。
やりたいことが伝わっているか最近迷うことがあって……。
美容師目線とお客様目線は絶対に違うから、なるべく相手が言いたいことを少しずつ引き出していく。あとはわかりやすく説明したりして、例えば『唇に合わせます』とかね。
お客さんは来店した時に緊張していたりすから、自分の言いたいことを100%言えないからね。
最初は聞き役に徹して、少し分かってきたら提案する感じかな。
固くならず、少しずつ距離を詰めて仲良くなる。友達じゃないけど、友達のようにね。
言いたいことを言える関係が目標ですかね。
やっぱり最終的には“お任せ”してもらえる関係が理想ですよね?
最初はしっかり話を聞く。センスを少しずつ足していく。いきなり100%任せてもらうのは難しいけど、何度か通ってもらうことで少しずつ信頼ができる。

3|“任せてもらえる”美容師になるには
自分のやりたいこととお客様の要望がずれた時はどうしていますか?
お客様にプラスになることが前提。明らかに合わなければ止めますが、やってみたいなら1回やってみる。ダメだったら「ほら、言ったでしょ」と言うことも。若い時は切りすぎて返金したこともあったりしたよ。
切りすぎ返金、本当にあるんですね。
本当に泣くくらい切りすぎた時もあったよ。その経験で危機回避能力もついた。20代~30代はやりすぎちゃう時もあるけど、それでめっちゃいいスタイルができることもあるよね。
バランスがその人に合っていればいいですよね。
バランスだね!
髪型はすごくカッコよくても、服装と合ってないとしっくりこない。洋服と合うかどうかはすごく気になるな。

4|“洒落ベーシック”をどう作るか
ベーシックでお洒落なスタイルを作るヒントは?どこからインスピレーションを得ていますか?
通勤時にYouTubeで新しいPVやアーティストMTVの作品を見たりします。最近だとエイサップのPVなど、モードな服と独特の映像が面白い。遊園地っぽかったり、ミックスされたカルチャーや雰囲気から影響を受けています。
MTVとかのヘアメイクやってる人とか、今イケてて飛ばしてる有名な人ばっかだろうからそこも勉強になるよね。

5|インスピレーションの源と視覚の重要性
僕は音楽中心で、画像や映像はあまり取り入れていませんでした。音は聞くんですけどね〜。
僕も昔は小説は読むけど、洋書みたいなのを見ることはないな。本はハマると思うよ。読んでると劇場みたいに情景が浮かんでくるようになるしね。
オーディブルでは聞いてるんですけどね。
だったらハマると思うけどな。読んでみなよ!
今は本当に面白いと思うのは“人”。人を見るのは本当に楽しいし、真面目に観察しちゃうタイプです。
実はヘアスタイルより洋服を見るのが好きかもしれない。

6|学さんの20代:アングラと葛藤と自分らしさ
毎日必死に生きることだけを考えて生きてるんですが、
学さんの20代や30代はどんな感じでしたか?当時の気持ち、今思えばどう感じていますか?
入社した頃は先輩が数人いて、異動もなく淡々と仕事。とにかく働くのが好きだった。同期とクラブに行くようになってからテンションが上がりすぎて、仕事に熱が入らなくて27歳までアシスタントを続けていました。
周りはどんどんスタイリストになっていくのに、自分だけ制服を着てて「これでいいのか」と悩んだ時期もあったかな。
ラフシモンズのTシャツが4、5万円するんだけど。ハイブランド全盛、クラブカルチャーやR&B・ヒップホップが流行っていて、その空気に刺激を受けてました。
「イケてるやつになりたい」「アングラでもカッコいい人いっぱいいる」と思うようになって、周りを気にしなくなちゃったな。
でも節度は守る、そんなバランス感覚が大切。みたいなね!

7|“自分らしさ”で人を引きつける
このまま自分のやり方で進んで大丈夫でしょうか?
絶対大丈夫。「自分っぽい人」にお客様は必ずついてくるし、合わない人は自然と離れていく。自分もお客様も楽しくなるし、一緒にご飯に行ける関係になることも。
最近「なんかいい」って感覚が強くて。髪型でも全体的に見てイケてるなとか、そういう“なんかいい”ってどこから来てるんでしょうか?
それは人それぞれ。自分が「好き」と思う感覚を大事にすればいい。他人と同じじゃなくていい。自分の価値観を信じて、それに従っていれば自然と“なんかいい”ができる。
いいやつになろうと真面目に頑張ってます。僕はショートカットが好きです。
ショートカットを見るのが一番楽しい?天才じゃん。その感覚、どんどん大事にした方がいいよ。

8|“ショートカット”への情熱と生活をデザインするカット
ショートカットのテストを学さんに見てもらってから特に気持ちが入るようになりました。
カット技術より「生活をデザインする」意識でやることが大事だと思う。
自分の切った髪型で一ヶ月とか二ヶ月とかお客さんが過ごすって凄くない?
結婚したりしちゃってさ、人生の中で凄い影響力すごくない?
カットをする中でここをこう切ったらここに落ちるとかの基本的な考えで仕事していたので、最近はもう少し感覚派になろうと思ってました。
その感覚を持てるのはすごく良いこと。「この毛が可愛い」とか細かい部分を大切にすればお客様もきっと喜ぶし、日々の小さな工夫がデザインになる。

9|“変化を求める”女性心理と顔から考えるカット
女性のお客様には「同じでいい」と言われても、少し変化を加えることが大事。「前髪を分けます」など一言だけでも満足度が上がる。男性にはあまり変化を求められないことも多いけど、女性は絶対に気を配ります。
顔をしっかり見て、どの部分を変えると良いか考える。例えば前下がりを切るとき、後ろばっかりラインを綺麗に切ることだけ考えるより、顔が小さく見えるように調整するなど、その人に合うカットを意識してるな。
10|今ハマってる音楽と“感覚で刺さる”スタイル
最近テンションが上がった曲やアーティストはありますか?
僕はアメリカのアーティストMk.geeにハマっています。ギターも上手くて、ロックだけどオルタナっぽい独特の雰囲気。去年ちょっとブレイクして、絶対売れると思ってます。
音楽や映像も、予想外の展開や「ここでこの音が来る!?」みたいな驚きがあると刺さる。そんな感覚をスタイルづくりにも取り入れたいです。
変調したりするんだね。最近多いよね?7拍子とかさ。
作る側もどんどんコアな感じになってきてるよね。
11|未来を縛らず、今を生きる
佐藤くんは、コアなところも沢山あるしあまり先のことを考えすぎず、「大丈夫だろう」というマインドでやりたいことをやるのが大事。未来を縛られず、自己投資も惜しまずで今まで通り取り組めば、いつか形になる。
ありがとうございました!!
